リモートで働く1日~発達障害 Ⅿさんの1日~

【読みもの】

今回は、一人暮らしをしながらリモートで働いているⅯさんのこれまでの経緯と、現在の一日の過ごし方を紹介します。

Ⅿさんは三十代後半で発達(はったつ)障害(しょうがい)の診断を受けています。

※この記事は子ども向けの易しい表現を交え、サイト管理人のたぬきが執筆しています。



(40代女性:Ⅿさん)

Ⅿさんは30代の時に病院に相談に行き、自分は発達障害だということが分かりました。

見た目では分からないことなので、それまでは理由が分からないまま、生きづらさを感じながら生活してきました。

「なぜそれまで気付かなかったの?」と思うかもしれないけれど、自分の生まれつきの感じ方が他の人と違うことに気付くことはけっこう難しいことなのです。

たぬきは小さい頃にんじんが大嫌いで、みんなそうだと思っていました。でも保育園でお友達がみんなおいしそうに食べているのを見て、「あれ?」とびっくりしました。

自分にとってあたりまえのことが、みんなも同じだと思ってしまう。

自分もどうせみんなと同じだろうと思ってしまう。

人間ってそんな生き物なのかなって思います。


同じように、自分の体調や心の感じ方も「どうやら他の人と全然違うみたいだ、調べてみよう」と気付くのはなかなか難しい。大人になってからはとくに。だって長い間、それがあたりまえで生きてきているんだもの。

だから世の中には、本当は病気だったり障害があったりするけれど、調べるきっかけがなくて、そのまま生活している人もたくさんいます。

その中には、なんだか生きづらいなあと感じながら過ごしている人もいれば、まったく気にならずに暮らしている人もいます。どれくらい困っているかはその人によるんだね。


Мさんはこれまでいろいろな仕事をしてきました。たくさんの人がいる会社で、たくさんの人とかかわりながら働いたこともありました。

そんな生活をしながら、Ⅿさんは「まわりの空気を読むのが苦手」と感じていたそうです。

空気を読むというのは、目に見えないルールを分かること。

だーれも言葉には出さないけれど、なんとなく今はこの人がしゃべる時間だなとか、なんとなく今は相手に(ゆず)ったほうがいいなとか、その場に応じて「この時はこうしたほうがいい」というルール(場の空気)を分かる(読む)こと。

目に見えないし音も聞こえないのに、どうしてそんなルールが分かるの?って感じなんだけどね。

人間はとくにそのルールに敏感(びんかん)な生き物で、日本人はとくにそのルールを大事にしようとするから、「空気が読めない」と感じていたⅯさんはとても働きづらかったのです。


それはⅯさん自身が悪いわけじゃなかったんだとⅯさんが知ったのは、病院に相談に行った時でした。先生に発達障害について説明されて、Ⅿさんは「なぞが解けた」感じがしたそうです。

先生と話をする中で、Ⅿさんは強い音や光が苦手なことにも気付きました。それもまた、自分が他の人よりも感覚が敏感だということを初めて知った瞬間でした。

自分の苦手なことに気付いたⅯさんは、生活を工夫することにしました。

部屋の壁に、外からの音を聞こえにくくするシートを貼ったり、耳をふさげるものを用意したり。まぶしい時にはサングラスをかけたり、部屋のカーテンを分厚くしたり。

他の人よりも敏感な自分のために、オリジナルの工夫をたくさんしているのです。


大勢の人たちと仕事をするのが苦手だと気付いたⅯさんは、家で一人で上手に働ける方法を考えました。

そしてパソコンで仕事ができるように2年間の講習を受けて勉強し、家などの会社ではない場所で仕事をする「テレワーク」をするようになりました。

今は家で事務の仕事をしています。この仕事をして3年目になりました。

そんなⅯさんの一日の過ごし方です。↓


【Ⅿさんの1日】

7:30 起きて、あったかくて甘い飲み物を飲んで元気を出します。

     気持ちを切り替えるため、家で働くけれどお化粧をします。

8:30 パソコンが動かないと困るので、早めにパソコンの電源を付けておきます。

     昼ご飯の用意をしておきます。食材を使って自分で作ります。

9:30 仕事を始めます。上司にメールで「今から仕事を始めます」という報告をします。

     「エクセル」という機能を使って決められた文章を入力する仕事をします。

12:30 お昼ご飯を食べます。

      家の周りを少し散歩します。気分がすっきりします。

13:30 午後の仕事を始めます。

      会社に届いたメールをエクセルに入力していく仕事をします。

18:15 仕事は終わりです。上司にメールで「今日の仕事を終わります」という報告をします。

19:00 バイクで近くのコンビニへ行ってアイスを買います。自分へのご褒美(ほうび)です。

      干していた洗濯物をたたみます。他の家事もします。

20:00 大好きな絵を描きます。イラストレーターの仕事も少ししています。

21:30 ラジオ英会話を聞きながら家の中で運動します。英語を勉強中です。

22:00 編み物をします。

22:30 お風呂にゆっくり入ります。

23:30 布団に入って寝ます。




これがⅯさんの1日です。(お仕事がある日)

Ⅿさんの1日には、心地よく過ごすための工夫がいっぱいありましたね。

ほっとする飲み物を飲んだり、ゆっくりお風呂に入ったり、ご褒美のアイスを食べたり。絵を描いたり運動したりお化粧したり。

仕事以外の楽しみや息抜きをたくさん持つことで、体も心も健康に暮らすことができます。

また、自分の得意なことや苦手なこと、「自分のことをよく知る」ことで毎日にいろいろな工夫ができます。人の助けを借りることもできます。

Ⅿさんはテレワークのために2年間勉強しましたが、障害や病気がある人が受けることができる講座を利用してパソコンを使えるようになりました。

Ⅿさんは「できることを増やす」ことが大好きです。勉強や練習をしていろいろな資格を取ることも好きです。現在も次々と新しいことに挑戦しています。

「将来何の仕事をするか」というのが考えづらい時には、「どんな毎日を過ごすか」という考え方でイメージしてみても良いかもしれませんね。

Ⅿさんの1日を見てみて、あなたはどう感じたでしょうか。

その感じ方もまた、人それぞれですね。




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