今回のテーマは「年金」。
学校で習ったから知っているよという人もいるかもしれないね。
なんとなく「若い時に国にお金を払って、歳を取ったらお金が返ってくる」というイメージがあるのではないかな?
今回は、そのイメージからすこーし深くもぐってみましょう。そうすれば、いずれ支払うことになる年金の正体がはっきり見えてくるようになりますよ。
それでは順番にポイントを押さえていきましょう~
ポイント① 年金はいつ払っていつもらえる?
現在の年金のスケジュールは、「20歳から支払いスタート。60歳まで払って、65歳から死ぬまで受け取れる」というもの。
20歳になったら、支払いがスタート!20歳で学生という人も多くいますが、それでも年金は支払わないといけないんです。
また、20歳よりも前に就職した場合にも年金を支払うことになります。はたちにはなっていないけど、立派な社会人ですからね。
「自分は高校卒業したら働くぞ!」というつもりの人なんかは、少し早めに年金の支払いがスタートすることを知っておくといいですね。
そして、60歳まで約40年間、毎月国に年金を支払っていくわけです。
40年…人生のおよそ半分と思うと、途方もない長さですね。
そんだけ長く払うんだからすごくいいことがあるんだよね?!と、思いたいですよね。
さあどうでしょう。もう少し年金について見ていきますよ。
ポイント② 年金はいくら払わなきゃいけないの?
月いくら払うの?という話の前に、大事なお知らせ。
それは、「年金には種類がある」ということ。
そして、「どの種類の年金を払うかによって、支払う金額が人によって違う」ということ。
では、年金の種類を見ていきましょう。
自分はどの種類の年金を払うことになるのかな~なんて想像しながら考えてみてね。
その1…国民みんなが払う「国民年金」(「基礎年金」とも言うよ)
→毎月1万6520円
その2…会社員や公務員が払う「厚生年金」
→給料の18.3%の、半分…会社員になりたての若者だったら、1万8000円くらい
※厚生年金を払っている人は、国民年金は別で支払わなくてOK
その3…任意(本人の自由)で払う年金
→種類によって金額はさまざま。払いたい人が毎月の年金にプラスして払う年金。
年金は、大きくはこの3種類に分けられます。
そしてその金額を見ると、思ったより高いな~…と思いませんか?
国民年金だけでも、20年払い続けると合計800万円。
そんなに払わなきゃいけないの?!…と思いますよね。
でも大事なのは、それでいくら返ってくるのかってこと。さらに、支払った金額によってもらえる金額も違ってくるということ。
さて、いくらぐらいもらえるのでしょうか…?
ポイント③ 年金っていくらもらえるの?
国民年金だけ払っていたよという人は、月にだいたい5万円くらい、厚生年金を払っていたよという人は14万円くらいもらえます。
へえ~…それって多いの少ないの?って思った人のために、もっと長い期間で考えてみましょうか。
たとえば国民年金を40年間で800万円払った人が、85歳まで生きたとしましょう。
65歳~85歳までの20年間で受け取れる年金はおよそ1700万円です。
厚生年金の人だったら、おおよそ1300万円払うことになりますが、3500万円受け取れます。
さらにプラスで別の年金も支払っていた人はもっと金額が高くなるってわけ。
ええ~!めちゃくちゃもらえるじゃん!と、思ったかな?
そうなんです、意外とちゃんともらえるんですよね。
年金は、だいたい75歳まで生きる(10年間もらう)と支払った分のお金が、
85歳まで生きる(20年間もらう)と支払った分の2~3倍のお金を受け取れることになります。
「長生きすればするほどお得」なんですね。
そう、払った分がそのまま戻ってくるわけじゃないんです。さて、ここで不安になるのが、「もし早く死んでしまったら…」ということ。
「ぼくは早死にしそうな気がするから年金払うのやめます!」なんて言っているそこの君、まあ落ち着きたまえ。
年金には、まだほかに役割があるのだよ。
ポイント④ 年金を払わないとどうなる?
「年金を払いたくない!」そう思った人もいるだろうけど、年金を払わないと、少し困ったことになるんだよね。
「おじいちゃんになった時にお金がもらえなくなるだけでしょ?」
いいえ、それだけではないんだな。
受け取れる年金にも、実は種類があるんです。
その1…65歳になったら毎月もらえる「老齢年金」
その2…大きなけがや病気をした時にもらえる「障害年金」
その3…家族を残して早くに亡くなってしまった時、残された家族がもらえる「遺族年金」
そう。実は年金には、その2、その3の役割があったんですね~。
人生の中でピンチになった時、年金を払っていれば助けてもらえるんです。
逆に言うと、年金を払っていないとこういう大ピンチの時に困ってしまうということなんです。ここはよーく考えないといけないポイントです。
ポイント⑤ 年金ってなんのためにあるの?
ここまでで分かったでしょうか。「年金は貯金とは違う」ということ。
払った分がそのまま戻ってくるわけじゃないんです。
じゃあ年金って何者?っていうと、「保険」(いざという時のためのもの)です。
年金は「年金保険」とも呼ばれていて、私たちが払うお金は「年金保険料」と呼ばれます。
年金を支払うのは、人生に保険をかけておくってことなんですね。
みんながみんな、元気に長生きして貯金もいっぱいできたら、年金なんて仕組みはいりません。
でもそうではないよね。おじいちゃんおばあちゃんになった時、お金が全然ない人だっている。途中で大きな事故に遭うかもしれない。小さな子どもを残して死んでしまうかもしれない。それは、あなたにだって起こるかもしれないことだよね。
そういう時に助けてもらうためのお金を、若いうちからコツコツ払っていきましょう。というのが、年金なんだね。
だから「いつ死ぬか分かんないし、年金なんて払いたくないよ!自分でお金ためるから大丈夫!」と思っていた人も、よく考える必要があるし、
私たち大人も、「高いよお…」と言いながらも頑張って払っているわけなんです。
ポイント⑥ 年金をもらえなくなる?!
こんなうわさを聞いたことはありませんか?
「僕らが歳をとった頃には、年金なんかもらえなくなる」って。
実際どうなるかなんて数十年後にならないと誰にもわからないのですが、
なぜそんなふうに言われているのか?それを知ることはすごく大事です。
訳も分からずおびえているより、何が起きているかを知った上で暮らしていくほうが楽だからね。
さっき年金の受け取り開始は65歳という話をしたけれど、かつては60歳でした。そして受け取れる年金の額は、少しずつ減ってきているのです。
それはなぜか?
シンプルに、日本という国にお金がないからです。
もしあなたが1万円を持っていて、それを10人に配ろうとしたら一人1000円ずつですよね。
でも、5000円しかお金がなかったら、一人500円ずつしか配れません。
それと同じで、国民のみんなに配れるだけのお金がなくなってきたので、配る時期を遅らせたり、一人ずつの金額を減らさなければいけなくなったわけです。
では、なぜ年金のためのお金は減ってきたのか?
一番の理由は、「少子化(=生まれる子どもが減っていること)」です。
想像してみて下さい。
生まれる子どもがどんどん減っていくと、年金を国に払ってくれる人の数も減っていきますよね。
でも、今まで年金を国に払ってきた人たちはどんどん歳を取って、年金を受け取るようになっていく。
つまり、「少子化の日本=子どもが少なくてお年寄りが多い国」は、
「年金を支払う人が少なくて、受け取る人が多い国」になってきたわけです。
すると、「集まるお金は減っていくのに配らなければいけないお金は増える」という苦しい状況になってきた。
そこで年金がもらえる年齢が遅くなり、もらえる金額も減ってしまったわけなんですね。
そして日本の少子化は、これからもっと進むと言われています。
ということは、「年金がもらえる時期がもっと遅くなったり、もらえる金額がもっと減っていくかもしれない」ということです。おそろしい…。
そんな世の中だから、「年金がいずれもらえなくなる」というウワサが出てきたわけです。
ではここで一つ、考えてみましょう。
「65歳になれば年金がもらえる」ということは、言い換えると
「65歳までは自力でお金を稼いで生活しなければいけない」ということ。
イメージできますか?自分が65歳でバリバリ働いているところ。
私は小学生の頃、自分の65歳を想像しろと言われたら、庭でのんびりお茶でも飲んでいるところをイメージしていました。
え~65歳になっても働かなくちゃいけないの~?って感じです。
65歳っていったら、体も歳をとってくるし、病気になったりケガをすることも増えるでしょう。みんながバリバリ働けるわけではありません。
だからこそ、歳を取った時のために「年金とは別にお金をたくわえておく」ことも、これからは大事になってくると言われています。
何百万もの年金を払って、そのうえ別でお金も貯めておかなきゃいけないなんて無理だよ!と思ったでしょうか。
そうですね。お金を稼ぐことも、ためることも、すごく大変です。
まだその経験がない人も、なんとなくその大変さは想像できるのではないでしょうか。
だからまわりの大人たちはあなたに「お金は大事」と何度も言うのかもしれませんね。
社会で生きていくってことは、そのためにお金を払い続けなければいけないんだということです。
これはあなたが知っておかなければいけない現実。
若いうちからお金をきちんとためておくことの大切さが少しイメージできたでしょうか?
「年金払ってるから、歳とっても大丈夫!」と言っている若者はたくさんいますが、それはもう遥か昔の話。
今の日本、これからの日本で生きていくみなさんは、年金に頼れば大丈夫という時代ではなくなっていることを忘れてはいけません。
さて、ここでひとつ、おもしろいつながりがあります。
年金をもらえる年齢は60歳から65歳に伸びた。
それとつながっているのが、「定年(会社員がいつまで働けるか)」です。
以前は定年は最低でも60歳までというルールでしたが、現在は65歳まで。もちろん、それ以上に働くことができる会社もあります。
つまり、年金がもらえる65歳まで自力で稼いで暮らせるように、働き方のルールも変わってきたってことなんですね。
こんなふうに、少子化がすすむ→高齢化社会(お年寄りが多い社会)になる
という変化に合わせて、日本の年金のしくみと働き方のしくみが変わったわけです。
世の中ってこんなふうにつながってるんだ~…と思うと、なかなか面白いのです。
「年金の問題は、実は少子化の問題や働き方とつながっていた!」
実は今回は、それを知れたことが大進歩です。
ニュースで聞くような社会問題って、実はこんなふうにすべてつながっているんです。
そして、そのつながりを知った上で社会に出ると、とっても生きやすい。
よくわからない問題がいっぱい載ったテストを解けって言われたら不安になるけれど、知っている問題が並んでいるテストなら落ち着いて考えられる。それと同じで、いろんなことを知って世の中を見渡すと、世界はもっと過ごしやすくて、息のしやすい場所になったりする。
今回もきっとその第一歩になっているはずです。
さて、話がずれましたが、次が最後のポイント。
ポイント⑦ こんな特別ルールがあります!
みんなに覚えておいてほしいのが、
こういう国の制度には、必ず「特別ルールがある」ってこと。
社会にはいろんな人がいますね。
いろんな人がいるのに、同じひとつのルールでみんなが生きていくなんて無理な話です。
給食は残さず食べましょうっていうルールに従って、アレルギーがある食べ物も食べなきゃ…なんてことはないよね。
この場合は「例外(特別)」だよっていうことが、国のルールにも必ずあります。
年金で言うと、
「うちのお母さんはお仕事はしていないけど、家族のために家事や子育てをして生活しているよ。年金もらえないの?」
→ちゃんと年金をもらえるように特別ルールがあります。
「急に仕事をクビになったりして、年金が払えなくなっちゃったら?」
→支払いが免除になったり、払う金額が減ったりする特別ルールがあります。
他にも、いろいろな状況にあわせた特別ルールがきちんと考えられています。
さてここで今回のもう一つ大事なこと。
国の制度で困ったことがあったら、「こんなことで困っているんだけど、どうにかなる方法はないかな」と自分で調べたり、
「こういう状況なんだけど助けてもらう方法はありませんか」と窓口(市役所とかね)に相談に行ってほしいのです。
もしかしたら、あなたに当てはまる特別ルールがあるかもしれない。自分では思いつかないような方法で、助けてもらえるかもしれない。
困った時、分からない時、とにかくあきらめないで聞いてみること。とりあえず聞いてみること。
大人になったって、分からないことはいっぱいあります。
だから大人になった時こそ、気にせず周りに相談することが生きるコツです。
人に聞いたり窓口に行くのは怖い、めんどくさい、どうせ無理…と思ったとしても。そこはなんとかやりとげてほしい。たぬきからのお願いです。
なんでわざわざそんなことを言うかって?
この国では、困っているのにそれを相談できなくて、苦しんだり損をしている人がたくさんいるからです。場合によっては、そのせいで本当に辛い人生を送ったり、命を落とす人もいます。
そういう人を、これ以上増やしてはいけないんですね。
だから「知る」っていうことが、生きていく上ですごく大切で、
「知ろうとすること」が、すごくすごくすごく大切。
これを読んでいる君は、知ろうとしている君は、とてもすばらしい。
そういうことです。
さて。また話がずれましたが、今回は年金についてのお話でした。
生きていくために必要な情報はたくさんありますが、まずひとつゲットしましたね。
ではでは、また次回は別のテーマでお会いしましょう。
たぬきも頑張って年金払うぞ~。