「なに人か」って、なにで決まるの?~国籍ってなに?~

【読みもの】

あなたはなに人ですか?

そんな質問をされたら、なんと答えますか?

これを読んでいる人は「日本人」と答える人が多そうだね。

じゃあ、なぜあなたは日本人なのですか?

こう聞いたら、いろんな答えが返ってきそうです。

「日本語をしゃべるから」

「日本人から生まれたから」

「日本で暮らしているから」

その人が「なに人か」って、結局なにで決まるのでしょう?

今日はそんなお話です。

「国籍」ってなに?


その人が「どこの国の人か」という情報を「国籍(こくせき)」といいます。

情報だけで考えると、「日本人である」ということは「日本国籍である」ということ。


自己紹介をする人が「国籍はカナダです」「国籍は中国です」などと話す場面を見たことはあるかな?

「国籍は、」という言い方をしているのはなぜだろう。

それは、見た目やいる場所では国籍は決まらないから。

見た目は日本人だけれど、国籍はアメリカだよという人もいるし、

日本に住んでいるけれど国籍は韓国だよという人もいる。

だから自己紹介をする時に、「国籍は○○です」という言い方をすることがあるんだね。


では、見た目やいる場所で国籍が決まらないとしたら、何で決まるんだろう?

国によって違う?!国籍のルール


結論を言うと、なにで国籍が決まるかというのは、実は国によって違う

日本はお父さんとお母さんどちらかが日本人なら、生まれた赤ちゃんは日本人だというルールが法律で決められている。

でもアメリカだと、アメリカという場所で生まれた赤ちゃんはみんなアメリカ人になる。親の国籍がなにであろうと。

国籍の決め方はこの二つに分かれていて、国によって違っている。

中国やイタリア、韓国などは、日本と同じように「親の国籍を子どもが引き継ぐ」決め方。

アメリカやブラジル、カナダなどは「生まれた場所の国籍を取得する」決め方。

同じ地球上に住んでいても、国によって「なに人か」という考え方が違うんだね。

ということは…

アメリカで、日本人とアメリカ人の両親から生まれた子どもの国籍はどうなるんだろう?

国籍が2つある人がいる?国籍を選べることがある?


日本のルールだと、日本人の親から生まれているので日本人だけど、アメリカのルールだと、アメリカで生まれているからアメリカ人。

この場合、生まれた時には2つの国籍をもつことができる。

日本人でもあり、アメリカ人でもあるってこと。

こういった状態を「二重国籍にじゅうこくせき」と言うよ。

ただ、ここからまた国によってルールが違ってくる。

二重国籍を持っていてもOKな国と、国籍は一つだけしか持てないという国がある

ちなみに日本は22歳以降は1つしか国籍を持つことができないので、その赤ちゃんは22歳になるまでに日本かアメリカかどちらかの国籍を「選ぶ」ことになる。

そう、この場合は自分でどちらかを選ぶことができるんだよね。

たとえばスポーツ選手なんかは、見た目や話す言語に関係なく「〇〇人選手」として活躍しているよね。

テニスの大坂なおみ選手や野球のヌートバー選手のように、異なる国籍の両親から生まれ、日本人選手として活躍する人は大勢いるね。

国籍は途中で変えられる?!


私は日本で、日本人の両親から生まれたから一生日本人か~。

と思った人もいるかもしれない。

いいえ、国籍は「途中で変えることができる」のです。日本ではね。

日本では「日本人をやめます」ということが憲法(国の決まり)で許されているよ。

一方で、これが許されていない国もある。そういった国では、もし別の国の国籍を取得できても元の国籍から離れられないので、二重国籍になるということだね。

日本は二重国籍はダメなので、もし別の国の国籍を取得したら、日本人ではなくなるよ。

外国籍にしたら日本で暮らせなくなる?


「国籍」があるということは、その国のルールで生きていくということ。それは、国民として守られるということでもある。


日本では学費を払わなくても小学校に通えるし、公務員の仕事もできるし、税金を払って年金を受け取ることもできる。ずっと日本に住み続けることができる。

でもこれは全て、日本人の国籍があるからできること。実は日本にいる外国人は、これらのことは基本的にはできない。

日本にいても日本の国籍が無ければ「外国人観光客」扱いになるので、長くても連続90日間しか日本にいることはできない。働ける仕事も制限されるよ。


また、外国の国籍を取得したのなら、当然その国のルールに従って生きることになる。

払う税金の金額も国によって違う。

たとえば「日本では消費税10%だったのにフィンランドでは24%だと~?!でも大学の学費がタダ?!助かる~!」なんてことがあったりする。

また、その国に「徴兵制(ちょうへいせい)」があれば、国民になったらあなたも訓練に参加して、戦争が起きたら戦いに行かなければいけない。


こんなふうに、国籍を変えるということは、生活の仕方や生き方が大きく変わることでもある。

だからもし変える時には、本当によくよく考えて、調べてから決断する必要があるわけだね。

外国籍を取得する方法(外国人になるには?)


国籍を変えるというのは、簡単な手続きで済むことではない。

これもまた国によってルールが違うんだけど、

うちの国の国籍を取るためには、これをクリアしてくださいね」という条件があるんだ。

たとえばアメリカは「永住権(えいじゅうけん)」(期限なくその国にいられる権利)を取得して、さらに5年以上アメリカに住んでいて、生活できるだけの英語力があって、アメリカの土地や歴史について勉強していて、さらに面接や筆記試験を合格しないと国籍がもらえない。聞くだけでもすごく大変そうだね。

一方でオーストラリアは永住権を取ってから1年で国籍が取得できる。

つまり、国籍を取りやすい国とそうでない国があって、その差もかなりあるというわけだね。

国籍が違う人と国際結婚したらどうなる?


もし日本で外国人と結婚したら、国籍においてどんなことが待っているのでしょう?

まずは名前。日本では結婚すると名字がひとつになりますね。

(近年では「事実婚」という特別な結婚の形ではあるけれど、夫婦べつの名字を使うこともあります)


国際結婚では、名字をひとつにしてもいいし、夫婦べつの名字でもOKです。

たとえばジョン・スミスさんと田中花子さんが結婚したとして、

お互いにそのままの名字と名前でいてもいいし、同じ名字にしてハナコ・スミスや田中ジョンになってもいいということ。

次に、もし子どもが産まれたらその国籍をどうするかということ。

日本では一つの国籍しか持つことができないから、子どもが22歳になるまでにどちらの国籍にするかを相談して決める必要がある。

でもさっき説明したように国籍というのは生活に大きくかかわる重要なことだから、簡単に決めることはできないね。

22歳までに「本人に決めさせる」という人も多い。さあその時子どもはどんなふうに国籍を選ぶだろう。

国籍が無い人がいる??


国籍が無い人なんているの?…たくさんいます、世界におよそ1000万人

そして日本にも。

どうして無国籍になってしまうのかというと、たとえばこんなパターンがあります。

・赤ちゃんの存在を隠してひっそりと出産し、産まれた後も国に何の手続きもされていない場合


・「生まれた場所で国籍が決まる国」の両親から日本で子どもが生まれたが、親の国籍を引き継ぐ手続きをされていない場合(日本は親が日本人でないと日本国籍にはならないので、日本で生まれていても日本の国籍をあげることはできないよ)

・難民として日本に来た外国人から子どもが生まれたが、親の国籍を引き継ぐ手続きをされていない場合(これも同じく、日本は親が日本人でないと日本国籍にはならないので、日本で生まれていても日本の国籍をあげることはできないよ)


これら以外にも、いろいろな理由で無国籍になっている人がたくさんいるよ。

2018年時点では、国が把握しているだけでも無国籍の人が日本に674人いると発表されている。


無国籍ということは、どの国にも身分を守られていないということ。保険や教育など、あたりまえにみんなが受けている国の保障(ほしょう)(国からのサポートや助け)も受けられないということだね。

この無国籍の問題は、世界中で解決しなければいけない大きな課題だと言われている。

なに人か=国籍 ではない?


さて、ここまで国籍のあれこれを見ていきました。

最初にお話ししたように、国籍とは「その人がなに人か」という情報です。

でも逆に言うと、それは情報にすぎません。

とっても大きく考えてみましょう。

私たちは心を持った人間という生き物です。

あなたがなに人かというのは、結局はあなたの心が決めること。

体がどんな形で生まれようが自分の心が性別を決めるように、自分がなに人でありたいかというのも本来はその人の自由です。

でもそれでは、異なる国どうしで様々な手続きや情報の管理がやりづらくなったり問題が起きてしまう。だから人間は国籍というルールを作って使っているわけです。

あくまで私たちはそのルールの中で、どこかの国の人間だという情報を持ち歩いているに過ぎないのです。

「両親の都合で外国で生まれたから外国籍だけど、自分は日本人の両親から生まれた日本人だ」と思えたり、


国際結婚をしてパートナーの国に一緒に住むために外国籍に変えたけれど、毎朝お味噌汁をおいしく飲む私はやっぱり日本人だわ~」と思えたり。


それは胸を張って「私は日本人」と言っていいのではないでしょうか。


たとえ国籍がどうであれ、学校で友達に「おまえアメリカ国籍なんだから日本人じゃないだろ!」とか、「日本語しゃべれないなら日本人じゃないじゃん!」なんて誰にも言われる筋合いないのです。

「国籍はブラジル、でもカナダ人だよ!」

「国籍は韓国、でもフランス人だよ!」

「国籍は日本人、でもイタリア人でありドイツ人でもあるかな」

「国籍はアメリカだけど、自分はなに人なのか、今も世界中を旅しながら考えているんだ」

そんなふうに心から自分を「○○人」と表現することって、人が人らしく生きる上ですごく大切なことだからです。



というわけで、今回は国籍のしくみを見ていきました。

でも結論としては、国籍はあくまで情報でありルール

なに人かという話とは分けて考えることができる、というのが一番大事なポイントです。

「およそ200の国がある地球上の、人間の一人」として生きていくために。



それではまた次回お会いしましょう!

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