なぜ絵本が必要なの?~動画だけじゃだめ?~

【お役立ち情報】

子どものための知育教材として古くから愛されている絵本。

しかし近年は動画でも様々な知育コンテンツが生み出されています。

そういう動画があれば絵本はいちいち用意しなくてもいいんじゃないの?と思う人も多いのではないでしょうか。

実際、それで済むならそのほうが手軽ではありますよね。

絵本の効果に関しては様々な観点から考えることができますが、このサイトは教材を通して言語表現力を広げることを主としていますので、今回は「言語能力」という点において絵本がどのような意味を持つのかを紹介していきたいと思います。

先に結論から述べると、絵本は言語能力の育成に非常に有効であり、動画だけではまかなえない効果があります。


ただし今回は、「動画が悪」というテーマではありません。あくまでも絵本のよいところに焦点を当てて解説していきますので、映像教材との併用もしながら、絵本を上手に使っていってほしいと思います。

乳幼児期の言語習得に効果的

赤ちゃんが生まれて「アーアー」「ウーウー」という喃語が始まると、いつおしゃべりするのかなと言語の発達が楽しみであったり、気になるところですよね。


赤ちゃんが言語を習得する過程においては、映像から流れる音よりも保護者の声で読み聞かせることが重要だという話は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

そういった点では、絵本は映像教材にはない効果を発揮します。

お母さんお父さんの声が耳に入りやすい赤ちゃんにとって、その声を通して絵本の言語が耳に流れてくることは心地よい刺激であり学びになります。

同じ絵本でも声の調子やリズムを変えたり、読む速さを変えたり、音や言語のバリエーションをつけながら読むことができます。

その子が好きなフレーズがあれば繰り返し読み上げたり、その場での微調整がきくというのも教材として使いやすい点です。

絵本を読むという状況はそもそも親子が近い距離にいるわけなので、その時間自体がコミュニケーションの空間になり得るというところもポイントですね。

人間は他の動物よりもはるかにコミュニケーションを通じて発達していく生き物なので、そういった点でも「読み聞かせ」は非常に効果的です。

豊かな思考力を育む

では、言語を習得しておしゃべりができるようになったら絵本は必要ないのかというと、そうではありません。

言語を習得した後でも絵本には大きなメリットがあります。

言語習得後、その後の長い将来を含めて考えた時に絵本にはどのようなメリットがあるのかを考えてみましょう。



言語能力において絵本の最大の強みは、興味を持ったページで立ち止まり、じっくり考えたり語り合いながら読み進めることができる点です。

実は「時間の制限なくじっくり考えて脳みそを動かすこと」が、思考力の発達に重要だと言われています。

絵本の絵の色使いをじっくり見たり、なぜこの話はこうなんだろう?とふと考えたり。時間にゆとりがあると、思わぬ気付きや疑問が生じます。

ただぼーっと絵本を見ている時間も脳にとっては意味があり、大切だということです。


イメージしづらい人は、大人に置き換えて考えてみて下さい。大人もぼーっとしている時に急にアイデアが浮かんだりすることがありますよね、本人は何かをしている自覚はないけれど、脳は動いていて、新しい発見をしているという状態です。


でも次々に刺激的で新しい情報が映像で流れていたらどうでしょうか。その情報をキャッチすることに終始してしまい、ちいさなことには目が向きにくいはずです。

どちらが絶対良いという話ではありません。映像を見ている時と絵本を見ている時は違った脳の使い方になるというのがポイントです。

映像は次々に場面が流れていくため、考えている途中でその思考が流れて行ってしまいます。同様に観察したい部分があっても、その作業が完了しないまま途中で流れて行ってしまうことになります。

動きやリズムから学べることに関しては強みのある映像教材ですが、こういったところは弱点でもあります。

もちろん動画には絵本にない魅力もありますので、状況や興味に応じて、どちらもバランスよく取り入れて使っていきたいものです。

語彙+言語表現力


絵本では、絵に添えられている文章を見ることで「文字を見る・読む」ことに慣れることができます。これは小学校に上がって教科書を読む前のステップとして大事なことです。

また小学校に上がって図書室で本を自由に借りられるようになった時、それ以前に絵本による読書体験や読書習慣が豊かであった方がその後の読書量につながりやすいのは自然なことだとイメージできるかと思います。

そしてその読書量が何につながるかと言うと、語彙と言語表現力です。

語彙につながるのはイメージしやすいかと思います。本を読むことで視覚からも多くの単語をキャッチしてインプットすることができます。ひらがなや漢字を覚えていく過程としても読書は有効です。


もう一つの言語表現力というのは、言葉の使い方を習得するということです。

子どもに説明する時にはよくゲームに例えます。ゲームで武器をたくさん集めることができたとしても、その使い方をマスターしていないと勝ち進めないよね、ということです。


「湯気」という言葉を知っている子どもは、語彙として「湯気」を持っているけれど、その言葉を使って文が作れるか、話しながら自然と単語をおりまぜることができるかというのは別問題です。

本を読むと、「湯気が出る」「湯気が立つ」などの表現が出てきます。そうした表現に何度も触れ、無意識に覚えていくことで自分の中にある言葉として「湯気」が使える武器になっていくわけです。

よく「語彙力」と聞きますが、あれにはこの言語表現力も含まれています。言葉としての「語彙」を持ち、かつそれを表現として使える能力をまとめて「語彙力」というのです。

子どもの言語能力を育むためには、言葉に触れさせるだけでなく、表現に触れさせることも意識していくと良いかと思います。

そうした点でも絵本は良い題材になるということですね。

目と耳と口、三方向からの学習

絵本の効果をさらに深掘りするために、絵本を読んでいる時に何が起こっているかを考えてみましょう。

読み聞かせされている時は、目で文字を見て耳で音を聞いて言葉に触れています。

話せるようになると、真似して口で読むことができます。そうすると、目と耳と口の三か所で言葉を学んでいる状態です。

人は何かを覚える時には、より多くのパーツを使うとよいとされています。

受験勉強の時、「声に出して覚えなさい」と言われたことはありませんか?あれはなぜかというと、目で見て、それを口に出して、耳で聞いて、3か所で学ぶことが暗記学習に効果的だからです。

よく考えてみると絵本も同じことをしているんですね。だから言葉を覚えて習得していく方法として非常に効果的だということです。

なぜ言語能力は必要?

今回は「なぜ絵本が必要なのか」というテーマですが、その答えは短い言葉で言うと「思考力や言語能力が育まれるから」。

ではそもそも、なぜ言語表現力が必要なのか?日本にいるんだから普通に適当に会話できれば生きていけるじゃないか、という疑問をもった人もいるかもしれません。

以前書いたコラムに「内言と外言」について紹介したものがあります。

一般的には、この言葉になじみがない人が多いのではないでしょうか。

これが「結局のところ言語能力はなんで必要なのか?」というところの答えになっているかと思いますので、気になる人は読んでみて下さい。(簡単に言うと、「言語能力は話をするためだけの能力ではないよ」という内容です)





ということで、今回は絵本を読むことの意味について深掘りしました。

コミュニケーションや読書習慣など、様々な面で効果的な絵本。

子どもの言語能力をすくすく育むために、上手に活用していきたいですね。

でも、一日何十冊も読ませなきゃなんてことはありません。それでは本末転倒です。大人も上手に息抜きしながら、ですよ。

それではまた次回~

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