法律は誰がどうやって作っているの?

【読みもの】

法律ってなに?

世の中にはいろいろな「ルール」がありますよね。

保育園や学校にもルールはあるし、家でのルール、町のルールなんかもありますね。

たとえば友達と相談して、「うそはつかないようにしよう。これはぼくたちのルールだよ」と決めたとします。

それは、あなたとお友達の中でのルールということになります。

同じようにして、「日本という国ではこのルールを守ってね」という決まり事が作られていて、それを「法律」といいます。

「どうしてこれはダメなの?」と大人に聞いた時、

「法律で決められているから」って言われたことありませんか?

日本のルールではダメなことだから、しちゃいけないよ。ということですね。

ではこの法律は、一体誰が作ったのでしょうか?

何でも知っている神様が作ってくれる…なら人間は楽ちんですが、そんなはずありません。

あなたと同じ「人間」が、頭で考え、悩み、人と相談しながら作っているのです。

法律はこうやって作られる!

まず、「法律を作る」というのは一つのお仕事です。

みんなの周りの大人が仕事をしているのと同じように、法律を作るお仕事をしている人がいます。

それは「国会議員こっかいぎいん()」です。「政治家(せいじか)」なんて呼ばれていることもありますね。

日本という国のことを考えながら、みんなの生活のためにいろいろな仕事をしてくれるのが国会議員です。そして、そんな国会議員たちが集まって仕事をする場所が「国会」です。


「こんな法律があったら役に立つだろうな」というアイデアがある国会議員がいたとします。そのアイデアを「こんな法律を考えたのですがどうでしょう…」と提案します。

国会には衆議院(しゅうぎいん)」と「参議院(さんぎいん)」という、2つのチームがあって、この両方のチームで「これなら法律にしてもいいよ」と認められなければ法律にはなりません。

まず1つ目のチームに提案します。

提案する相手は、「議長」といって、国会の中でもみんなをまとめるリーダーのような人です。

そうするとリーダーから「こんなアイデアがあるんだけど、法律としてふさわしいか調べてくれない?」と、専門家たちを集めた「委員会」にお願いがされます。

国会議員も人間なので、世の中のことを何でも知っているわけではありません。たとえば環境に関する法律だったら環境についてよく研究している専門家たちに意見を聞きながら調べていきます。

そして専門的に調べた結果、「この法律なら大丈夫そうだよ」となれば、チームの国会議員たちで「法律にしても良いか」を考えます。

チームのみんなで投票をして、「法律にしてもOK!」ということになれば、今度はもう一つのチームに提案をします。

そしてさっきの繰り返し。



もう一つのチームのリーダーがまた専門家たちに調べてもらい、OKが出ればチームのメンバーたちに提案されます。

こうして、衆議院と参議院2つのチームでOKが出たら、ようやくそのアイデアは法律として認められ、日本のルールとして加えられます。

法律が作られるためには、たくさんの人の賛成がないといけないのです。

ちなみに、衆議院と参議院、2つのチームで713人もの国会議員がいます。すごくたくさんの人が、この国の法律について考えて決めているんですね。

国会で認められた法律は、しばらくしてから日本の法律になります。

すぐにではないのは、その間に国民のみんなに「新しくこんな法律ができますよ」というのを知らせるためです。

こうやって法律はできているんですね。



もちろん、途中で「この法律は認められないよ」という反対意見が多ければボツになることもあります。

また、「ここはこう変えた方が良い法律になるんじゃないか」ということで、途中で内容が修正されて、最初の形から変わって法律になることもありますよ。

ルール同士がぶつかったら?~法律を守らなくてもいい?!~


最初に話したように、世の中にはいろんなルールがあります。

じゃあ、もしルール同士がぶつかってしまったらどうなるのでしょうか?

例えば、あなたがお友達とこんなルールを決めたとします。

「気に入らない人がいたら、たたいてもいい」

でも日本では「人に暴力をふるってはいけない」という意味の法律があります。

さあ、ここで2つのルールがぶつかってしまいましたね。

この2つのルールがぶつかった時は、「法律の方が正しい」ということになります。

なぜか?

それは、簡単に言うとルールにはランキングがあるからです。

このルールが1位(1番強い、1番優先される)、2位、3位…

というように、ルール同士がぶつかった時にはランキングの高いルールが正しいということになります。

では、簡単に図にしたランキングを見てみましょう。↓


図で出てきたルールについて紹介します。


憲法…国がしてはいけないこと・しなければいけないことを決めたルール

法律…国の人たちがしてはいけないこと・しなければいけないことを決めたルール

政令…内閣(国のためのお仕事のうち、とくに大事なことをする国会議員の人たち)が出すルール

条例…地方自治体(~県、~市、~町など)が決めるルール

1位の「憲法(けんぽう)」は、法律と同じように日本の中でのルールですが、法律よりも強いのです。

例えば、憲法には「国は、人々が自分らしく幸せに生きていけるようにしようね」という意味のルールがあります。でも、法律の中に人々が自分らしく生きることをジャマするような法律があったとしたら、2つのルールはぶつかってしまいますね。

その時には、ランキングでは憲法の方が強いので、その法律は無くなったり、変わったりします。

そんなことあるの?と思った人もいるかもしれませんが、実はこういうことはたくさんあるんですよ。

「この法律、憲法とぶつかってるんじゃないの?」と思った人が国に訴えて、裁判をします。

すると裁判所では、本当に法律と憲法がぶつかっているかを調べます。そして答え(「判決(はんけつ)」といいます)を出します。


そこで「違憲(いけん)判決(はんけつ)」といって、「この法律は憲法に違反している」という結果が出ると、その法律は無くなったり変えられたりする、というわけです。

これで日本の様々な法律が変えられてきました。そして、これからも変わっていくと思います。


他のルールでも同じことがいえますね。

ランキングが下のルールが上のルールを越えることはないので、

たとえば「法律に違反した政令は出せない」ですし、「政令に違反した条例は作れない」のです。

図にのっているルール以外にも、世の中には「条約(日本が他の国と決めたルール)」や「国際法(世界の国々で決めたルール)」などたくさんのルールがあるので、実際はもう少し複雑だったりします。

でも子どものうちからこの図の意味を知っているだけでも、とてもすごいことですよ。

なぜルールに順位があるの?


では、なんでこんなランキングがあるんでしょう?

「わかりづらい!1つのルールにしたらいいのに!」と思うかもしれませんね。

でもそれは、「なんでルールが必要か」っていう話と実はつながっています。

人間は完璧な生き物ではありません。

みんなが自由に自分の好き勝手に生きていたら、お互いを傷つけ合い、苦しめ合ってしまう。

そんなことから守るためには、ルールが必要です。

そして、ルールは人間がいる限りどんな場所にも必要です。

だからいろんな場所で、いろんな人がいろんなルールを作ります。

それを一つのところだけで、一部の人だけで、全部決めるのは難しいですよね。

だから世の中にはたくさんのルールが散らばっています。

でも人間はやっぱり完璧な生き物ではないので、ルールを作っているうちに、大切なことを忘れてしまったり、何が一番大事なことかを見失ったりします。そして、間違ったルールを作ってしまうことがあります。

法律だって、完璧ではない人間が作った、完璧ではないものなんです。

でもこのランキングがあることで、「このルールはおかしくない?」と気付いた時、何を優先して大事にするべきかを思い出させてくれます。

そして、間違ったルールを作られにくくしてくれます。

もしいじわるな人が「お前より俺の方が偉いから、お前の物は俺の物だ!」なんて勝手なルールであなたの物をとったなら、そんなルールは作れないのだと言ってやりましょう。

だって憲法では「人はみんな平等」と決められているし、法律では「人の物を勝手に取ってはいけない」と決められているのだから。





さて、今回は「法律」のお話でした。

少し難しかったけど、よく最後まで読めたね!

それではまた次回~

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