「内言」と「外言」を知っていますか?~なぜ言語能力は大切?~

【お役立ち情報】

子どもの言語能力ってどうしたら伸びますか?やっぱり生まれつきですか?と聞かれることがあります。

このサイトで公開している教材は、言葉を「使う」ことを通して言語能力を養うことを目的としているわけですが…

「そもそもなぜ言語能力が大切なの?」

という点を、少し深掘りしてお話してみようと思います。キーワードは「外言」と「内言」です。


子どもの言語能力を育むポイントとして押さえておくとよいかと思います。

外言とは?

ここである実験をしたいと思います。すぐ終わりますのでご協力ください。

突然ですが、少し喋ってみて下さい。

テーマは何でもいいですよ。最近の出来事でも、今朝食べたものでも。


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いま、口から何か言葉が出たと思います。それが名前を付けると「外言」というものです。

(普段音声ではなく手話で会話をする人は、今やった手話が外言だと考えて下さい。)

外言とはつまり、普段のコミュニケーションで使う言葉のことです。

外に向かって使う言葉と書いて外言。

「言語」と聞くと、ほとんどの人はこの外言をイメージすると思います。

むしろ、この外言ではない言語を想像したことがない人が多いのではないでしょうか。

でも実は、もう一つ注目したい言語があります。

タイトルでもお気づきの通り、「内言」というものです。

外へ向かない、内へ向く言葉と書いて内言です。

内言とは?

ここで再び実験です。また少々お付き合いください。

突然ですが、少し考え事をしてみて下さい。

テーマは今日の夕飯に何を食べるか、にしてみましょうか。

ひとりごとを言うのはなしで、黙って考えてみて下さい。


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では振り返ってみてほしいのですが、

考えていた時、頭の中になにか言葉が浮かびませんでしたか?

たとえば「コンビニで弁当でも買うか…」とか、「今日は豚肉が余ってるから…」とか、音には出さなくても、「言葉が頭の中に流れている」状態だったのではないでしょうか。

きちんとした文章になっていなくても「コンビニ」「豚肉」などの単語は浮かんだ、という人もいるかと思います。

このように、頭の中で考える時に使う言葉を「外言」といいます。

私たちが毎日使っている、なんなら外言よりも使っている人も多い外言ですが、ほとんど意識されることがない言語でもあります。

この外言がいかに重要な役割を持っているかを確かめるために、逆のことをしてみて下さい。

外言を使わずに、つまり内言となる言葉を一切思い浮かべずに考え事をしてみてください。テーマは「将来」についてにしましょうか。




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どうでしょうか。

なかなか難しいと感じた人が多いと思います。

絵や映像でなんとか思考をまわそうとしても、無意識にふわっと言葉が浮かんできてしまうのではないでしょうか。

では、もう一つ試してみましょう。

同じように「○○さん(特定の知り合いなら誰でもよいです)」について、どう思うかを考えてみて下さい。

好きか嫌いかだけでなく、その理由や、どのような人物だと思うか具体的に考えてみて下さい。ひとりごとはなしですよ。


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どうでしょうか。

さっきよりも、難しいと感じた人が多いのではないでしょうか。

なぜ難しくなったかというと、テーマが具体的になったからです。

人はより具体的なことを考えるためには、より多くの内言を必要とします。何かを詳しく説明するにはその分だけ言葉を尽くして話さなければならないのと同じですね。

さて、言語には外言と内言という側面があることが分かりました。

では「言語能力を育む」ことにおいて、私たちが目を向けるべきはどちらでしょうか。

外言と内言は、別物だけどつながっている

外言と内言は結局同じじゃないの?と思う人もいるかもしれません。

外言と内言は、同じ人の言葉であることに変わりはないですが、厳密には別物です。

例えば英語を話せる日本人が普段のコミュニケーションで英語を使っていたとしましょう。でも思考する時は日本語の内言がメインだとしたら、外言と内言それぞれ違った言語を使っていることになります。


同じ言語だったとしても、外言と内言はその使い方が違います

外言は会話の形できちんと文法が整った形にして外に出していますが、内言は必ずしもきっちりとした文章でなくても良いわけです。

さっきふわふわと頭の中に単語が浮かんだ人がいるように、考えごとをしている時は断片的に大量の内言がめぐっているような使い方になるケースが多いです。
同じ種類の武器に見えるけれど、実はスペックが違って扱い方も違うという感じでしょうか。

ただ、もちろん同じ脳みそから生まれている言葉なので、外言と内言は繋がっています。

知らない言葉を使うことができないように、基本的には外言で使えない言葉は内言では使えません

(自閉症など子どもの特性によっては、内言があふれていても外言にあらわれるまでに壁があって時間がかかる、などのケースもあります)

つまり多くの場合、語彙力があって外言で幅広い言葉を使いこなせる人は、内言も同じだけのボキャブラリーがあるため、より深みのある思考ができるということです。

内言と心のつながり

先ほどやったように、深く具体的に考えたり、あるいは考えたことを整理するためには内言が必要です。

考えごと以外の場面も思い出してみて下さい。

無意識にこんな経験をしていませんか?

自分の中にある内言の中から、その時の体験や感情にぴったりの言葉を見つけたり、起きている出来事を自分の中で説明づけたり

私たちは日々の中で、何気なくそんな体験を繰り返しています。

内言で最も注目すべきは、こうして「感情や思考と結びついて自分の精神世界を作っていく役割も果たす」ということです。


つまり、言語能力を育むことは外言だけでなく内言も豊かにするので、心を豊かにする取り組みでもあるのです。

とてもシンプルな言い方にすると、「言葉を育てることは、心を育てること」ということです。

なんだかどこかで聞いたことのあるような言葉ですが、内言と外言から考えると実に核心をついた言葉ともいえます。

内言は「育てることができる地頭のよさ」

内言は脳内の考えを整理したり説明づける時に使うため、内言が豊かになれば思考力の助けにもなります。


地頭がいい」という言葉があります。頭の回転が速いという意味で用いることの多い言葉ですが、具体的にはどういう能力がある人を「地頭がいい」というのでしょうか?

私たちにとって「地頭がいい」ということの定義や要素はとらえ方によって様々です。おそらく人によってその答えも変わってくると思います。

たとえば、

・自分のアイデアを思いつくスピードが速い

・感情のコントロールをしながら思考ができる

・同時にいくつもの作業や思考ができる

など、具体的に考えればたくさんの要素があげられると思います。


「地頭」というと「生まれつき」という意味合いが含まれていますが、上に挙げた3つのポイントも含めて、その要素の中には「生まれつきのように見えて実は後天的に身に着けられる能力」もけっこうあったりします。

私はその一つに、「内言の豊かさ」があると考えています。

たとえば塾のカリスマ講師がいたとして、素晴らしく分かりやすい説明をよどみなくしゃべり続ける授業ができるとします。

ああいう人って地頭がいいんだろうなあ…天才なんだな…と思う人も多いのではないでしょうか。

ただ、その人は生まれつきの才能だけでそれができているかというと、実はそうではないかもしれない。

こんなふうにイメージしてみて下さい。

その人が生まれてから今日まで育んできた内言がとても豊かで、それを使って頭の中にある思考を楽に整理しながら、その時伝えたい内容を的確にあらわす言葉を脳内の豊富なボキャブラリーの中から楽に選び取ることができて、その上でしゃべっている。

そうイメージしてみると、その人は単なる天才とは違って見えてくるはずです。

もちろん人の能力は様々な要素が重なり合って成立していますが、内言は「後天的に育てることができる地頭のよさ」の一つだということです。

意地の悪い言い方をしてみると、「まるで生まれつき頭が良さそうにみえる能力」といったところでしょうか。

良い言い方をするなら、「努力で獲得できる才能」とも言えるかもしれません。

だから言語能力は大事

ここまで内言にスポットライトが当たっていますが、実世界で武器として使うのは外言です。

繰り返しになりますが、外言と内言はつながっています。

心を育み、思考力を高め、精神世界を広げた内言が、形を変えて外言となって口から出るわけです。


言語能力を育むことは、内言を豊かにしてその人の幅を広げます。その広がった部分もまた外言として使えるようになるわけです。そうした言語活動を通してまた言語能力が育まれ、さらに内言が豊かになり…というふうに、ループしていきます。

きっと、「言語能力を高めたい」と考えている人のイメージは「外言」のパワーアップだと思います。

上手に説明をしたいとか、面白い話をできるようになりたいとか。

言語能力を高めることは最終的にはそこにつながりますが、同時に内言の成長があることで成り立つものです。

その側面をおさえた上で言語能力を伸ばそうと取り組むか、全く意識せずに外言だけに目を向けているかでは、大きな差があると思います。

そして今回のテーマの答えでもありますが、外言だけでなく内言の成長によって心や思考力を育てることができるからこそ、子どもにとって(大人にとっても)言語能力を育むことは大事なのです。

言語能力?ちょっと国語が苦手だって生きていけるじゃん!と言ってしまいたくなる気持ちも分かるのですが、今回の「外言と内言」という点から考えると、子どもたちがより生きやすくなる一つの手段として豊かな言語能力を育んであげられたらいいのかなと思います。


子どもが「国語きらい!」と言った時に少しこの記事のことを思い出して親子で実験してもらえると嬉しいです。


同じく言語能力を育む読書についても記事にしていますのでよろしければご覧下さい。↓↓






ということで今回は言語能力がなぜ必要なのか?というお話でした。


それではまた次回~

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