たぬき通信4 得意を仕事に、の逆を考えてみると

【読みもの】



「将来の夢はなに?」と聞かれて、「何が向いているか分からない」という子どもがいます。それは、大人になっても変わらなかったりもします。

学校ではしばしば進路について考える時間の中で、自己分析をワークシートを使ったりします。

たいていの場合、「自分の得意なこと」や「興味のあること」をきっかけとして、将来の目標を見つけていく形が多いです。

これで進路を見つけていく子もかなりいるのですが、それでも息詰まる子もたまにいるんですね。

「得意なことないです」という子が意外と多いのです。自分の得意に気付くことってものすごく機転が必要なことですからね。大人に褒められたことがそのまま得意なことと認識される場合が多く、さりげなく得意なのに目立って褒められないことには気が付かない。そんなことはよくあります。


そういった「得意が分からない」子どもに時々こんな質問を投げることがあります。

苦手なことや、嫌だなあと思うことはなに?」

ちょっとネガティブな質問ですね。でも、この質問に変えると途端にペラペラとしゃべり出す子がいます。苦手の方が記憶にくっきり残っていて強く認識している場合があるんですね。

自己肯定感が低いようにもとれますが、自分のことを客観視しようとする大人の第一歩と捉えてあげたいところです。

「人前に出ることが苦手」例えばこんな答えが返ってきたとします。

「じゃあ一人でコツコツ作業するような仕事が向いているね」と安易に結び付ける前に、ここはちょっと深掘りしてみたいところです。

人前に出ることがなぜ嫌なのか?その子にとってどんな意味を持つのか?何か条件が付けば平気なのか?

苦手なことの奥には、その子の価値観が眠っています。仕事と価値観は切っても切れない結びつきがあります。ここが一致しないと苦しくなってしまうわけですね。

だから得意なことでも苦手なことでも、入り口はどちらでもよくて、「価値観を探る」というゴールを目指して進みます。


同じように「人前に出ることが苦手」と言った子どもでも、その理由がこんなふうに分かれていることがあります。↓

①クラスメイトなど利害関係のある人前で表現することは嫌だが表現すること自体には喜びを感じる
②人に対して自分を表現することよりも、自分の中で表現を養ったり守ったりすることのほうがずっと大切だと考えている


①の場合には、表現する力を伸ばすことも仕事に生かすことも十分に可能です。

②の場合には、内省的な能力をより生かした方向で学問や仕事を考えていくと興味につながりそうです。


これを子どもが自分の力でできたらすごいのですが難しいので、大人が近くで質問を投げかけたり返答の実際を確かめたりしながらガイドできると良いですね。


とはいえ自己認識は本当に難しく、進路の決定は後悔のない完璧なものにしようなんて思っても、なかなかそうはいかないです。

大人の私たちだって、「学生の頃に思い描いていた未来と完全に一致した仕事をして後悔も変更も一切ない」という人は少ないですからね。

安直になりすぎず、でも肩の力を入れすぎず将来について一緒に考えてあげられると良いですね。


ちなみに番外編ですが、「苦手なことをあえて仕事にする」パターンもあります。
「自分ができなくて困ったことと同じように困っている誰かを助ける」パターンです。

例えば、「自分は学校が苦手だったから、そういう子どもを助けるために先生になる」だとか。

このパターンは意外と逆転の発想でしっくりくる子どももいるので、一つのヒントとして出してみるのも手ですね。「得意を仕事に」ならぬ「苦手を仕事に」です。

苦手だからこそ、苦手な人を助けることは得意」という発想の転換が刺さる子どももいます。

昨今はとくに「得意なことでしか仕事できない」と思い込んでいる子どもがものすごく多いように思います。その冷静さやリスクマネジメントの視点も素晴らしいことではあるのですが。





あなたの夢はなんですか?
その夢の奥にある価値観って何なのでしょうか?



それではまた次回のたぬき通信でお会いしましょう~


たぬき

タイトルとURLをコピーしました